2018/12/05

この記事は ペパボデザイナー Advent Calendar 2018の5日目です。
やしこです。
新卒で鎌倉の面白法人KAYACに入社し、その後CROOZ株式会社でゲームアプリのUIをたくさんつくっていました。
今はGMOペパボ株式会社でCtoCハンドメイドサービス「minne」のUIデザイナーをしています。
今日はサービスプロダクトのUIデザインという仕事がめちゃエモくてよさみが深いので布教させてください。
ほんと学んでも学んでも新たな発見があって飽きがこないんです。
一言であらわすと本当にこつこつとした地味〜なお仕事です。
旧来の「デザイン」という単語から連想されるばーんと派手でカッコイイビジュアルなんかは扱いません。
UIとはユーザーインターフェースのこと。
ボタンの場所やフォーム、情報の置き場所を考えて、
サービスの使い勝手を良くしていくことが使命です。
世に出る際も、アプリ20%リリースといった手段をとり、
段階的に一部のユーザーだけが見えるようにしてこっそり反応を見たり、
会員番号が特定の番号のユーザーだけに見えるようにして様子を見て、
そ〜っと川に稚魚を放つようにリリースします。
そこに「新機能を搭載しました!」や「○○をリリース!」などの
いわゆるローンチ宣言はめったにありません。
最近リリースしたものを例にしますと
「アプリの配送先の登録をしやすくしました」
もうすでに地味ですね。
具体的にどういうお困り事が起きていたかというと、
引っ越しなどをした際に住所変更をしたお客さんが
アプリのお客様情報から登録住所を変更した、ように見えているのに
実際には変更できているわけではなく前の住所に届く、
ということがUIと案内がわかりにくい故に頻発していたのです。つらい。
現にAndroid iOSから月に50件以上のお問い合わせを頂いていました。
お問い合わせというアクションを起こす人は少数ですので
潜在的にはもっとたくさんの人が困っていたのでしょう。
そこで配送先管理の大改修にとりかかりました。
まずは
(1)アプリから配送先が登録・内容の更新・削除が問題なくできるようにする
(2)お客様情報と配送先の管理方法が違うことをお客さんが気持ちよく理解して使用できる
そこを目指してUIを最適なものにブラッシュアップしていきます。
最終成果物を見比べると
これがこれ
に、なっただけなのですが、
ここに至るまでに考えうるパターンは膨大です。
このページは導線がいくつもの箇所から分岐しており、条件によって挙動が変わります。
そのどこからきてどの画面でも
新規登録・編集・削除を矛盾なくコントロールできるデザインが必要です。
既存のフローを壊さないように、なおかつ新しい画面を差し込むというのは他の人が途中までやっていたジェンガを壊さないように引き継ぐような緊張感があります。
最大登録の上限もあります。不正な文字列は弾かないといけません。何文字入れられるのか考えないといけません。
1件ずつ削除できるのか、まとめて何件も削除できるのか、
全て消して0件になってしまってよいのでしょうか?再登録は簡単?
AndroidとiOSでどこまで操作方法を寄せるべきか?
確認を入れるべきか?入れないべきか?確認なしに更新してよい情報か?
ミスしても致命的にならないようにするためには?ユーザーはどれくらいの頻度でここを見る?
…と、あらゆるパターンを検討して、冗長な箇所を削ぎ落としていきました。
過剰な案内は逆に混乱を生みます。
何度も検討を重ね、あと一歩で不親切になるようなギリギリの境界に落とし込んで完成させていきます。
開発も困難を極め、決して楽とは言えない工数がかかりました。
正直機能としてはマニアックなものでこのことで困る人はminneの利用者全体の中ではそう多くは居ません。
もっと売上に直結するような施策にリソースを割くべきだという意見もあるかもしれません。
しかしこの機能をつかってくださるお客さんは「配送先をいくつも登録している」
つまり最低でも2回以上はminneを使ってお買い物をしているお得意様、ロイヤルカスタマーです。
ロイヤルカスタマーに問い合わせをさせるくらいの不便をかけているというのは
サービスとしてはよくない兆候です。
幸いこの改善をリリースをしてからというもの
月に50件以上あった配送先に関するお問い合わせは両OSとも激減しました。
新しいUIが使いにくいという苦情もいまのところ見当たらず、胸をなでおろしています。
「使いにくくなった」「前のほうがよかった」なんて言われてしまうようだと3流、
使っている人に「あっここ変わってる」と気づかれているようだと2流、
気づかれずに「そこに在る」のが1流だとおもっています。
家の建築にたとえてみましょう。
トイレがなぜか子供部屋の中にあったり、階段の段差が段によって違ったり、
ドアを開いてみたら壁にぶつかって全部開かないなんてことがあると「これはおかしい」と気づきます。怪我もしかねませんし、この家はなんて使いにくいんだ、と怒りが湧いてくることでしょう。
ところがトイレが生活導線の正しい箇所に有り、階段があたりまえに同じ段差に設計されていて、ドアがきちんと最後まで開く、最高です。最高ですが当たり前のこと過ぎて意識にのぼってきません。
「そこにちゃんとあることの良さ」を認知するのはなかなか難しいです。
同業ならまだしも普通のひとはまず気づかないでしょう。
意識の外に出るデザイン。最高です。
説明書をみなくても使い方がわかり、どんなひとでも無理なく使え、そこにあって邪魔にならない、それは本当に素晴らしいデザインです。そしてとても難しい。
気づきはしないのですが、行き届いたデザインというのは使い手への配慮の連続ですので
「なんかここにいると落ち着くなぁ」「なんか好きだなぁ」「なんかついついこのアプリひらいちゃうなぁ」という
目に見えない何かとしてそこに確かに存在するのです。
とにかくやっていることが地味だし
びっくりするくらい気づかれない上に褒められないし
なんならあの人あんなに時間かけてなにやってんだろね、
と思われがちなのですが
水のように存在し空気のように馴染んでいつの間にかそこに居るって
デザインの真髄に近いことだとおもうのです。
極めるのにはまだまだ時間が必要そうです。
わたしはこの仕事とっても好きです。
明日は@tsubasa_srisくんです。
たのしみだ〜〜〜