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例の騒動について自分なりに考えてみた

time 2015/09/11

例の騒動について自分なりに考えてみた

今この話題に触れるのは若干やけどしそうで怖いのですが
デザイナーなのにこのことに関して何も言わないのもどうなのかな、と
悩んだ末に自分なりの所感をまとめました
あくまで個人の感想なので流し読み程度にお願いします。

エンブレムそのものに関してはいろいろな人が意見が出しているので
いまさら言い直すことも無いかなと思うのですが
ざっくりうちの意見は

・ロゴ発表直後にベルギーのデザイナーから似ていると指摘
→セーフ。ベルギーのデザイナーのほうが対応が感情的すぎ。
・サントリーの件
→アウト。ただしああいうのはチェックの際に見抜くのが難しいので気の毒。
別件なのでオリンピックには関係ないので分けて考える必要がある
・プレゼン資料の使用想定写真がネットでひろったもの
→ギリセーフ。内部資料ならあるっちゃあるケース。
ただし外に発表するのはアウト。タイミングも悪かった。作りなおすべきだった

結論
基本的に対応の脇が甘いから揚げ足取られがちだけど
どれも使用中止になるほどの問題では無かった。と思っています。
近年のオリンピックのロゴの中ではクールだとおもっていたので残念です。

ロ、ロンドンさんェ…

もう少し別の角度で見てみます
この問題は何を指していて
私達デザイナーは何を考えないといけないのか

どんなデザインでも説明できないと通らない

今回ダメになったのはほぼここに尽きると思います
クライアントとコンシューマ(国民)を納得させるのはデザイナーの仕事であり
どれだけ時間とお金を割いてもここはがんばるべきだったのに…!ぐぬぬぬ…!

委員会の人の「100%似ないデザインなんてないですよ」
「デザイナーにはわかって一般人にはわかんないから」では、
乱暴すぎて仕事を果たしているとは言いがたい。
あまつさえ撤回の理由が「国民がうるさいから取り下げますよ」 ではあんまりだとおもいます。
これでは火に油を注ぐのも無理はないです。だれだって聞いたらムッとしちゃうとおもいます。
自信をもって2つのロゴの成り立ちの違い
コンセプト・展開例・制作フロー・選考フローを説明すれはここまで悪い結末にはならなかったと思っています
このへんに関してはこちらの深津さんの記事でうまいこと説明されていて
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takayukifukatsu/20150907-00049112/
これくらい説明できていれば全員とはいわずとも納得していただけたんじゃないかなあと思っています。

料理に例えて言うと
今回腕利きの板前が競って寿司をつくる←コンペ
寿司とは酢飯に鮮魚をのせたものである←これがデザインのパターン
しかし握り方やネタの種類・鮮度で何通りも違いがあるし←これがデザインの腕
価格も回転寿司1皿100円〜ウン万円まで様々。
寿司通が食べれば天と地ほどの味の差が出る←寿司通が審査委員
出だしが何ものにも似ないようにする、
というアプローチはわりと現実的ではなくて
100%独創的な見たことのない寿司料理を発明しようとなると
最終的に寿司でも食べ物でもなくなってしまう可能性がある

今回カリフォルニアロールと巻き寿司似てますよね?巻いてるしさー
みたいなクレームが外国人観光客から来て
日本人から見ると何いってんだかと呆れるけど
たしかに世界の大多数の人から見たらこれはFISH ROLL…!
FISHをRICEでROLLしてるよネ!というかんじかと…。

別にやましいこともないので
巻き寿司の素晴らしさと違いを堂々と説明すればよかったのに。

そして似ない寿司なんてありませんよ!世界中の寿司を調べるなんて不可能です!
というより寿司とはこういうものだ。米と魚があわさって寿司なんだ
という方向性で説明したほうが説得できたのかな〜と思います。

ただ、オリンピックという国民的なプロジェクトにおいて
回転寿司しか食べたことのない人でもうまい!と思える
寿司をつくるのが目指すべき方向だったというのは一理ある。
今回寿司通はうなるが高級寿司を食べたことない人は…いまいちだったのかな〜

もっとうまいたとえあったのでぺたり
https://www.shortnote.jp/view/notes/AFWBNhtZ

デザイナーのプロ意識

もろもろのトレース案件に関して
良くも悪くもデジタルはすごいっていう

60代の方はカラス口っていう墨を金属に含ませてネジでインク量を調整する
Gペンを50倍くらい難しくした線を引く道具で
1ミリより細い線をフリーハンドで描けた、とききます。
(もちろんフォントも看板なんか手書きだし印刷は活版用専門職がいた)
たぶん審査委員やっている人々はこれくらいかそれに近しい年代でしょう
トレースもトレース台という専門の道具がいるし
切り貼り合成もノリとはさみ
インターネットなんて無いので
パリの写真が欲しければパリに撮影に行く、これが普通。
他の人の素材をもってくるのが物理的に難しい状態です。

比べて現在の平成デザイナーの場合
Photoshopを2年位使っていれば現場でわりとやっていけるようになります
トレースはレイヤーで簡単
合成は自動的にコンテンツに応じてくれまくり
パリの写真なんてググれば一発
Photoshopが高いのがネックですが
最近はPhotoshop並の機能で5000円程度て手に入るソフトも有ります

そのへんから考えると本当に昔は「職人」だったデザイナーの敷居が
いまはかなり下がっているのが現実なのかな思います。自分含めて。
プロ意識というか作り手、職人としてのプライドには
世代によってかなり乖離があると考えています。
そのあたりのマインドのギャップが表層に出てきてしまったのかなと…。

1964年オリンピックの呪い

1964年のオリンピックが良くも悪くも影響が大きいなあと感じています
大成功+高度成長期+思い出補正で
亀倉さんのデザインはもはや神格化されているといっても過言ではないと思います。

2020年東京五輪のエンブレムは亀倉デザインの正統進化
http://www.japandesign.ne.jp/editors/150729-tokyoolympic/

いや、すごいかっこいいとおもいます。いまだにかっこいい。50年以上前のデザインとは思えない。
万博とオリンピックは20世紀少年とか見ているとほんとに良かったんだろうなあ
とどちらも知らない身としては羨ましくなります。
この呪いがいろいろな箇所に少なからず影響しているような気がしてなりません。

2020年のオリンピックに対して批判しか出ない、1964年は良かった、と国全体の空気が悪いなあと感じます。
ザハさんも気の毒だったし(彼女はまだ粘っているので素晴らしい)
もうちょい前向きにどんなお祭りにするか考えればいいのに…
出てきたものはとりあえず全部叩くぜ!みたいな
後ろ向きのエネルギーに満ちてるのがやだなあと思っています。
良いお祭りを作り出す努力をもう少し一人一人が考えてもいいのかなあと
この一連の騒動を経て思いました。まる。

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多摩美卒/デザイナー/Sketch/湘南住/子育て中/ハンドメイド

ものづくりをする人を応援するサービスのスタッフをやっています☺️

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